登山は、自然の空気を吸って吐いて、汗を流しながら山を登っていくことで、日常のストレスから解放され、心も体もリフレッシュできます。頑張って山頂に着いたときには、普段の生活では得難い充実感や達成感が感じられます。
山頂まで長時間歩き続けることで、体力強化や基礎代謝の向上など、楽しみながら健康面でプラスの効果が期待できる点も登山の魅力といえます。
初心者だけど、「気持ちよくて達成感のある登山がしたい」、「友人に誘われた」。
そんな登山を始めてみたい「登山入門者」、始めたばかりの「登山初心者」に向けた、登山に関する基礎知識をまとめました。
必要な装備・服装について
まずは、登山初心者が最初にそろえておくべき基本の装備を紹介します。
- 登山ウェア
- 登山靴
- リュック
- レインウェア
- 帽子
- 手袋・靴下などの小物
- ヘッドライト
- 登山地図
- 水や軽食・非常食
- ゴミ袋
などが登山で必要になる装備です。
登山ウェア
登山では標高100m程度の差で、気温は0.5~0.6℃も違ってきます。また、汗が蒸発すると体温が奪われてしまうため、体温調節ができないと低体温症などのリスクも高まります。そのため、冬場だけでなく夏場でも重ね着して体温調節を行うことが重要です。
登山ウェアの基本は、上記で紹介した3つのレイヤリングです。
ベースレイヤー(肌着、アンダーウェア)
肌着、アンダーウェアとも言いますが、選ぶ際にまず考える事は素材です。汗冷えをしないよう乾きやすい化繊素材のもの、また春秋の寒い時期にはウール素材のアンダーウェアもおすすめです。
アンダーウェアには様々な厚さがあり、薄いものは夏山用に、暑いものは春秋の登山用に使い分けたり、またアンダーウェアを重ね着する事もあります。
アンダーウェアの素材にはウールや化繊、それとウールと化繊をあわせたハイブリッド素材、防臭効果を持つものなどがあります。
ミッドレイヤー(中間着・防寒着)
中間着にはフリースかインナーダウンが定番です。フリースはアウターにもインナーにも用途が広く、軽く、保温力も吸汗拡散性にも優れている登山の服装に最適な素材です。特に薄手のフリースは様々な季節で行動着兼インナーとしても使用できるのでおすすめです。
アウターレイヤー(防風・防水、レインウェア、ウインドブレーカー)
アウターレイヤーにはレインウェアを代用してしまうのが簡単です。 レインウェアは風にも強く、またレインウェアをアウターとして代用すればもう一枚余計にジャケットを持っていく必要がなくなります。
パンツ
パンツの素材も肌着同様、乾きやすい化繊素材を使用したものを選びましょう。
伸縮性があれば良いのですが、なくても足があげやすく、岩や木で擦っても簡単には破れないようなある程度丈夫なものが適しています。 スポーツやトレーニング用などの速乾性と伸縮性のあるパンツも動きやすいのでおすすめです。
登山靴
登山で必要な装備の中でも一番重要と言える装備は登山靴(トレッキングシューズ)になります。登山靴を履くことで、「疲労が減る」「怪我をしにくくなる」という効果があります。
登山靴・トレッキングシューズを選ぶ条件
- つま先が固いこと
- 靴底が固いこと
- くるぶしが固定できること
- 防水性があること
自分の目的に沿って、自分の足に合う最適なシューズを選んでください。
リュック・ザック
登山で使うリュックは、背中全体で荷物を背負えるものや荷物をバランス良く入れられる収納力の高いもの、背中が蒸れにくいベンチレーション機能が備わったものなど、機能性を重視して選びましょう。
容量については、日帰りで20リットル前後、山小屋1泊2日で30~40リットル程度が目安ですが、泊数が多くなったり、テント泊になったりすることで容量が変わります。
大型ザックでは、80、100、120リットルなどの大型もありますが、目的に応じて、自分の体にフィットするザックを選びましょう。
ザックのサイズ(目安)
ザックの容量の大きさはリットル(ℓ)で表しますが、下記が目安となります。
- 日帰りの山歩きの場合:20~30リットル
- 1泊程度の山小屋泊の場合:30~40リットル
- 数泊以上の山小屋泊、テント泊の場合:50リットル以上
その他のポイント
- 腰で背負えること(腰ベルトがあるもの)
- 自分の身体にフィットするか
- 上からかぶさる形になっている雨ブタ付がおすすめ
- 併せてザックを雨から守るザックカバーも必要になります
レインウェア
山の天気は変わりやすく、山を歩いているうちに、雨に降られるということはよくあります。
雨風に当たれば、体が冷え、気化熱を奪われることで、真夏でも低体温症が起きるため、雨風を防ぐ手立てとしてレインウェアは必ず携行すべき用具と言えます。
レインウェアを選ぶ条件
- 防水性に優れていること
- 透湿性 に優れていること(風は通さないが水蒸気を通す)
- 上下セパレート(別)になっていること
防水性と透湿性を高いレベルで両立した「ゴアテックス」がおすすめです。
帽子
夏には強い日差しよけに、冬には防寒具になる帽子は登山の必需品です。
頭部を小枝などから保護したり、紫外線から守ったりするために、涼しい環境でも帽子を被っていくことをおすすめします。
帽子もウェアと同様に透湿性が高いものが好ましく、日差しよけにはキャップタイプよりハットタイプの帽子が効果的です。雨の日にはハットの上からレインウェアのフードをかぶれば視界の確保ができますし、ゴアテックス性のハットは雨の日でも快適です。
冬の登山では防寒用に、ウールやフリースなどの保温性に優れた素材の帽子を用意しましょう。頭部からかなりの熱をうばわれるので保温することが大切です。かなり寒い場合には耳まで覆うタイプの帽子がおすすめです。
手袋・靴下などの小物
手袋
寒い季節の登山ではついついポケットに手を入てしまいます。歩行中両手がふさがると大変危険ですので必ず手袋を用意しましょう。
ウールやフリース地のもの、また防風性に優れた素材を使ったものは風が強い日に重宝します。冬のかなり寒い日には薄手のインナー手袋を使用し、保温効果を上げるのも1つの方法です。
高機能の手袋には防水機能を備えたものがあります。特別ここまでのものは必要はないですが、雨が降った寒い日の登山に役立ちます。
靴下
登山では厚手の靴下を使用しましょう。厚手の靴下は歩行時の足への衝撃をやわらげてくれます。
コットンは良く汗を吸ってくれるのですが、汗で濡れてしまうと非常に乾きにくいと言う欠点がありますので、やや厚めのウールのソックスが良いでしょう。最近では柔らかくてしなやかなウールを使用した登山用の靴下も販売されています。履き心地が良いこと、また抗菌作用があるので長時間履いても臭うことがないので人気です。
寒い時期の登山には保温性が高い上質なウールやウール混紡のものがおすすめですが、靴に対して靴下が厚すぎると窮屈になり、靴擦れを起こしますので注意してください。
ヘッドライト
昼間の登山で明るい時間帯に下山する予定だとしても、登山初心者の場合は到着が予定より大幅に遅れる可能性もあるため、念のため用意しておくと良いでしょう。
懐中電灯でも問題ありませんが、両手が塞がってしまうため、ヘッドライトがおすすめです。
登山地図
登山地図は、登山の際に登るコースを確認するために必要なアイテムです。アプリなどでもルートを確認することはできますが、地図のほうが大きく、電波が届かない場合でも見ることができるためおすすめです。
水や軽食・非常食
登山をすると想像以上に汗をかきます。飲料水やスポーツドリンクなどを持参し、こまめな水分補給を心掛けましょう。
初心者の場合、「荷物を重くしたくない」「短時間の登山だから」などと油断してしまうこともあるかもしれませんが、少なくとも1Lは用意しておきましょう。
また、登山で消費したカロリーを補える程度の軽食・非常食も必要です。チョコレートやスナックバーなど、持ち歩きしやすく腹持ちの良いものを用意しましょう。
ゴミ袋
山で出たゴミは持ち帰るのが登山のマナーです。食事などで出たゴミを持ち帰るために、ゴミ袋を用意しておきましょう。
初めての山選びについて
「新緑を楽しみたい」「眺めのよい山頂を目指したい」など、まずは行ってみたい山のイメージを膨らませ、自分のレベルに合った山を選びましょう。
ポピュラーで人気のある山は、登山者が多く、登山道が整備されていることが多いので安心!
初心者にオススメの山
【おすすめ条件】
塩谷丸山
小樽にある塩谷丸山。なんといっても見どころは、余市湾の大パノラマを綺麗に眺めることができるところです。頂上は360°開けているので、深い山々を望むこともできます。
アクセス | 下車駅から徒歩20分程度 |
住所 | 北海道小樽市塩谷 |
詳細 | 塩谷丸山の詳細 |
鳳来寺山
日本三大東照宮の鳳来寺東照宮が鎮座する山。鳳来寺の本堂までは荘厳な石段が続きます。
途中には推定樹齢800年・樹高60mで樹高日本一と言われる傘杉、重要文化財の仁王門などがお出迎え。歴史と自然をたっぷりと感じることができる山になっています。
アクセス | 新東名 新城IC~車13.4㎞(22分) 豊川IC~車約55分 30㎞ 鳳来峡IC~車約25分 12km |
住所 | 愛知県新城市門谷字鳳来寺1 |
詳細 | 鳳来寺山の詳細 |
宮島・弥山
世界遺産、厳島神社の背後に佇む弥山(みせん)。その魅力は何と言っても歴史と自然の融合。
道中いたるところに史跡があり、珍しい岩なども多く見られます。頂上付近では瀬戸内を臨むことも、厳島神社の鳥居を上空から眺めることもできます。伊藤博文に「日本三景の一の真価は頂上の眺めにあり」と絶賛させた景色。
アクセス | 宮島口駅/船/10分/徒歩/20分/さらにロープウェイ/20分/または徒歩/90分 |
住所 | 広島県廿日市市宮島町 |
詳細 | 弥山の詳細 |
高尾山
都心から約50kmでアクセスも良い高尾山。「関東の富士見100景」にも選定されており、山頂からは美しい富士山を眺めることができます。1号路はケーブルカーで途中まで登れるうえ、トイレも設置されているので初心者でも手ぶらで登りやすいのが特徴です。
アクセス | 圏央道高尾山ICより約1km(約3分) |
住所 | 東京都八王子市高尾町2176 |
詳細 | 高尾山の詳細 |
宝登山
標高497mの低山で、初心者登山にぴったりの宝登山。桜の名所としても知られており、他にもツツジやしゃくなげなど、季節によって美しい花や紅葉を楽しむことができます。
宝登山ハイキングコースは急勾配の道も少なく、家族連れでも気軽に登山を楽しめるおすすめコースです。
アクセス | 秩父鉄道長瀞駅から徒歩で15分 |
住所 | 埼玉県秩父郡長瀞町大字長瀞 |
詳細 | 宝登山の詳細 |
山のマナー・ルール
初心者が初めて登山に挑戦するときは、装備だけでなく登山のマナーも確認しておくことが大切です。意外と知らないものがあるのでしっかり予習しておきましょう。
登山中は1列で歩く
登山道で横に広がって歩いてしまうとすれ違ったり追い抜いたりすることができなくなってしまうため、数名のグループでの登山をする場合であっても1列で歩くのがマナーです。
また、無理に追い抜こうとすると、互いにぶつかったり足を踏み外して滑落したりなどの危険があります。
登山道を歩く
登山では整備された登山道からは外れないようにしましょう。山によっては登山道から少し外れただけでも転落などの危険性があります。また、貴重な植物を踏み付けてしまう場合もあるので注意が必要です。
すれ違う人には挨拶を
登山中、道でほかの人とすれ違うときは挨拶を交わすのがマナーです。登山を気持ち良く楽しむために挨拶をするのはもちろん、万が一遭難者が出た場合、目撃証言になる可能性もあります。
登り優先で道を譲る
登山の際には、登る人を優先して道を譲るのがマナーです。これは、一般的に下りる人のほうが相手に気付きやすく、避けるスペースを確保しやすいためです。
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